労働契約と労使の権利・義務   

先日労働法の勉強会がありました。
テーマは「労働契約と労使の権利・義務」
雇用契約を結んで仕事をしているサラリーマン、OLの皆さんは自分の会社との契約についてあまり考えたことが無いと思いますのでここで一度考えて見ましょう。
 使用者の皆さんは労働効率UPのために労使の権利義務を法律の視点から検討し就業規則を見直してみましょう。

労働契約とは
 「労働者が使用者の指揮・命令に従って労務を提供し、使用者がその対価として労働者に賃金を支払うことを基本的な内容とする、諾成、有償、双務契約」
雇用契約(民法623条)とは
 「当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約束し、相手方がこれに報酬 を与えることを約束する契約」
労働契約と雇用契約は実質的に違いなしとしている。
その他類似契約として請負契約(民法632条)、委任契約(民法643条)が有りま すが労働法の適用があるのは雇用契約で労務の提供実態に使用従属性の有無(人的従 属性、経済的従属性、組織的従属性)が有るか無いかで判断されなす。
自分の労働契約が労働法の適用のある契約であることを確認したら次へ行きましょう。

労働法の適用される労働者と使用者の権利と義務

労働者の権利と義務
1 基本的権利
 ・賃金請求権
  労基法11条=「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」
2 義務
a基本的義務
 ・労働義務=労務提供義務
  労働者は、労働契約に基づく基本的義務として、使用者の指揮命令に従って誠実に労働する義務を負う。
<労働義務の内容>
・ 誠実労働義務・職務専念義務
  労働者は労働契約に基づいて、命じられた仕事が完全に遂行できる心身の状態を保ち、誠実に勤務しなければならず、就業時間中は、使用者の指揮命令に従って、その職務に専念する義務がある。
 ・教育・研修受講義務
  労働者は、OJTをはじめとして、使用者が実施する、業務に必要な知識、技術などに関する教育・研修を受講する義務がある。
 *労働義務違反=懲戒処分と損害賠償責任の追求があり得る。
b 付随義務
 ・職場(企業)秩序遵守義務
  労働者は使用者との労働契約により、使用者の業務命令に基づいて誠実に労務を提供すると同時に、職場(企業)秩序を遵守する義務があり、違反者は懲戒処分を受けることがある。
   ただし、使用者の懲戒処分は、その事由と手段を就業規則に明記して実施されなければならない。
・ 誠実義務
 ⅰ兼職の規制
  裁判例では、就業時間外の兼職につき、就業規則による許可制の効力は否定しないものの、その効力について限定的に解釈し、会社の職場秩序に影響せず、会社に対する労務の提供に格別の支障を掃除させない程度・態様の兼職は兼職規制違反ではないとし、その影響・支障のあるものは禁止および懲戒処分の対象となるとする。具体的には、兼業の目的、期間、内容・態様などを基準に判断されている。
 ⅱ(在職中の)守秘義務、競業避止義務
  労働者は在職中、業務上知りえた使用者の営業秘密や企業秘密をその承諾無く 使用したり、開示したりしてはならず、また、使用者の事業と競合する事業行為をしてはならない。
 ⅲ(退職後の)守秘義務・競業避止義務
  近時の裁判例では、労働者の退職後の守秘義務については、規定上の根拠合意を必要とし、労働者の営業の自由との関係上無制限に認められるものではない。また、退職後の競業避止義務についても、労働者の職業選択の自由などとの関上、競業避止義務に関する就業規則などの定め、または合意が必要であり、その内は、競業避止の期間、地域、職種、使用者の利益の程度、労働者の不利益の程度、代償措置の有無などを総合して、合理的範囲にとどまっていることを要するとされている。
・その他の義務
 ⅰ調査協力義務
  労働者は労働義務の履行の範囲内において、使用者の行う各種の調査に協力する義務がある。
 ⅱ 健康保持・健康診断受診義務
  労働者は、自己の健康を保持し、使用者の行う健康診断を受診する義務がある。


使用者の権利と義務

1 基本的権利
・ 労務給付請求権=指揮命令権
 使用者は、労働契約の締結により、労働者の労働力を利用・処分する権限を取得する。
<指揮命令権=労務指揮権の内容>
・ 業務命令権=使用者が労働契約の締結によって取得した、労働者の労働力を利用・処分するための権限
・ 人事権=労働者の採用、配置、異動、人事考課、昇格、昇進、降格、休職、懲戒、解雇など、労働契約の締結によって使用者が取得した、労働者の地位や処遇に関する決定権限。

2 義務
 a 基本的義務
 ・賃金支払い義務
  賃金の支払いに関する法律に従って支払う。労働基準法、最低賃金法、賃金の支払いの確保に関する法律等
 b 付随的義務
 ・ 労働の受領義務
  労働者の労働は、労働契約に基づくところの「義務」であって権利ではなく、使用者に就労を請求する権利は無い。使用者は賃金を払えば、提供された労働力を使用するか否かは自由であると解されている。
 ・ 安全配慮義務
  ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、その法律関係の付随的義務として、当事者の一方または双方が相手方に対して信義則上負う義務。
 ・雇用契約における安全配慮義務
  労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用しまたは使用者の指示の下に労務を提供する過程において、労働者の生命および身体などを危険から保護するよう配慮すべき義務。
 ・ 職場環境保持(配慮)義務
  使用者は、労働者が職場で快適に働けるように、職場環境を整備・保持しなければならない。
  なを、男女雇用機会均等法(21条)では、使用者は、女性労働者が職場における性的な言動への対応により労働条件につき不利益を受けたり、性的な言動によって就業環境が害されることのないよう、雇用管理上の配慮をしなければならないと定められている。
 ・ 人格的利益の尊重義務
  使用者は、労働契約上の付随義務として、労働者のプライバシーや名誉などの人格的利益を尊重する義務がある。
 ・ その他の義務
  ⅰ配転(転勤)に際しての、経済的・精神的不利益を軽減する配慮義務
  ⅱ男女の平等取り扱い義務

 *労使の双方の立場で法律的に権利・義務を整理して考えてみる機会はあまりありません。この機会にご一考いただいてはいかがでしょう。
 労使のトラブルの原因はお互いが権利義務を誠実に履行しないところにある場合が往々にしてあります。



  

by nukina1950 | 2004-06-29 12:41 | 法律

<< もう夏真っ盛り! 7月11日は参議院選挙です。声... >>